【看護師の基本】看護記録・電子カルテとは

看護師のみなさんが毎日書かないといけない「看護記録」は、その書かれている内容は幅広く、その中身は様々な要素で構成されています。看護記録は、ナースの基本であり、ナースである以上、働いている間は、ずっとついてくる仕事です。

まずは、看護記録とは何か、どんな役割があるのかについて説明していきます。看護学生や看護師になりたての新人の方に、少しでも参考になれば幸いです。

看護記録とは

看護記録とは、「看護師が見て、聴いて、考えて、やったことを記録したもの」です。
看護記録について、日本看護協会では、看護師の責務を記述した看護業務基準において、次のように規定しています。

「看護実践の記録は、看護職の思考と行為を示すものである。看護実践の内容等に関する記録は、ほかのケア提供者との情報共有や、ケアの継続性、一貫性に寄与するだけでなく、ケアの評価及びその質の向上に加え、患者情報の管理及び開示のために貴重な資料となる。看護職は必要な情報を効率よく、利用しやすい形で記録する。」




看護師にとって「看護記録」が持つ重要な意味を理解し、記載する際の留意事項やポイントを知ることは、必要な情報を「誰にでもわかる表現で、的確に正しく記録する」ことにつながります。

看護師が行ったことは看護師だけではなく、患者に携わるあらゆる人がわかるようにちゃんと記録することが重要です。

看護記録の法的な位置付け

これまで看護記録が重要性だと説明してきましたが、実は、看護記録には法的な規定がありません。書かなくてもよいのです。具体的には、「医師法」では、「医師は、診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない(第24条)」と、ありますが、「保健師助産師看護師法」では、「助産録の記録及び保存の義務(第42条)」に「助産師が分べんの介助をしたときは、助産に関する事項を遅滞なく助産録に記載しなければならない」と規定されているものの、看護記録については何も規定されていないのです。

では、「看護記録は書かなくてよいのでは?」と思われるかも知れませんが、法的な規定がないため、罰則がないというだけで、看護記録は医療訴訟の際などには、診療録と同様に重要な証拠をなります。

すなわち、記載しないことに関して、罰則はありませんが、訴訟になった場合に看護記録に不備があると、「必要な観察や処置が行われていない」と判断されることもあるということです。そのため、自分の身を守るためにもしっかりと必要なことは記録するようにしていくことが大切です。

看護記録の構成要素

看護記録の中身について説明していきます。「看護記録」というのは、いろいろな記録を大きなくくりでまとめた名称です。ここでは、看護記録を分解して、その構成要素を確認していきます。

看護記録は次の5つから構成されています。

(1)基礎情報
患者についての個別的な情報が記載されたものです。現在、生じている、あるいは、今後、生じる可能性のある問題を判別するための重要な情報源となります。
例えば、氏名、年齢、血液型、キーパーソン、バイタルサイン、アレルギー、感染症、入院までの経過、宗教、患者・家族が問題と感じていること、などです。

(2)看護問題リスト
看護問題とは、患者が望む生活を妨げており、看護介入によって解決もしくは軽減できる事柄です。
看護問題リストとは、患者が抱える問題(看護問題)を列挙したものです。医療チームメンバーは、これらの問題を解決すべく介入を行っていきます。

(3)看護計画
患者が抱えるを解決するための患者目標(患者が主題となり、問題を解決するためにどのようにしていくかなどの具体的な行動目標)と、ケア計画(患者目標を達成するための具体的な行動計画)を記載したものです。

(4)経過記録
看護問題の経過や治療・処置・ケア・看護実践などについて記載したものです。患者の話したことや、看護師が観察したこと、患者に実施した援助内容について記載し、それらを患者目標と照らし合わせて評価するものです。必要であれば、看護計画の修正も行います。

(5)看護サマリー
サマリー(Summary)とは、要約のことです。患者の経過や実施された看護ケアなどの情報を簡単にまとめたものです。転棟時、転院時、退院時など必要に応じて作成します。

電子カルテとは

カルテというのは、診療の過程で得られた患者の病状や治療経過などの情報を記録したものです。昨今のIT化に伴い、カルテは紙から電子媒体へと変容しています。現在、全国の病院では、厚生労働省の方針を受けて、紙カルテから電子カルテへの移行が進んでいます。電子カルテとは、診療録に記載される情報をコンピュータ上で電子化して記録したものです。ここでは、電子カルテのメリット、デメリットを記載します。

(1)電子カルテのメリット
●情報検索がしやすい
患者のカルテからすぐに必要な情報が得られます。

●省スペース化
紙カルテの場合、紙や資料の厚さで膨大なスペースが必要になりますが、電子化することにより、省スペースで大量のデータが保存できます。

●情報共有しやすい
ネットワークを用いることで、病院全体で共通の情報を利用できます。

●高速な情報伝達
医師の指示、処方内容や食事の変更、検査結果などの情報が瞬時に相互伝達されます。

●カスタマイズできる
自分がよく使う項目を設定することで、使いやすいようにカスタマイズできます。

●履歴が残る
カルテへのアクセス時間や修正した履歴が残るため、情報の発信元が特定できます。

(2)電子カルテのデメリット
●停電に弱い
停電時には発電機や蓄電池など、別途電力の確保が必要です。データベースにアクセスできなければ、情報が得られず、診療機能がマヒするおそれがあります。

●慣れが必要
電子カルテに慣れていないと、入力に時間がかかったり、情報収集が紙カルテよりも大変になったりする場合があります。

●一覧性が低い
電子カルテには画面の表示範囲に制限があり、紙カルテよりも一度に閲覧できる情報量が少なくなる傾向があります。

●データ量の制限
ハードディスクの容量により、保存できる容量が決まっています。そのため、容量オーバーになると適切に保存が出来なくなるおそれがあります。
(最近のハードディスクは保存できる情報の密度が高いので、あらかじめ十分な容量を確保したり、ディスク容量の追加をすることにより、このことは回避できます)

●費用がかかる
電子カルテの導入や保守のために膨大な費用がかかります。そのため、なかなか普及が進まないといった現状もあります。

●眼精疲労や肩こり
デスクワークが増えることで、眼精疲労や肩こり、腰通といった症状が増えるといった報告もあります。

看護記録の情報開示

看護記録は、もはや医療従事者だけが見られる秘密の記録ではありません。

(1)希望すればカルテは見られる
情報開示とは、「請求のあった当事者に情報を提供すること」と定義され、「個人情報保護法」や「診療情報の提供に関する指針(日本医師会)」に示されています。
かつては、「患者のプライバシーに関する情報は医療従事者のみが知っておき、誰にも情報は漏らさない」という考えでした。
しかし、いまでは「患者のプライバシーに関する情報は医療従事者のみでなく、患者や家族には知らせてもよい」という考えになってきました。そのため、患者が希望するのであれば、必要な情報を提供することになっています。

(2)インフォームドコンセントと情報開示
インフォームドコンセントは「説明(informed)と同意(consent)」と訳されます。この理念や個人情報の考え方の浸透に伴い、よりよい効果をもたらす医療は、一方的に提供するものではありません。
※患者が自ら病気の内容や治療方針について理解することは、患者の自己決定の尊重や相互の信頼と協力に基づくものでなければならないのです。

(3)裁判と看護記録
ときに患者と治療におけるやりとりで訴訟問題となることがあります。その場合、裁判でも看護記録は重要な証拠書類として認められています。近年、医療法の改訂により、すべての病院において看護記録が備えるべき診療の記録と決められました。
このことから、看護記録は正しく、正確に伝わるように書くことの重要性がより一層高まっています。

看護記録は看護助手が書いてもいいの?

療養病床(病棟)では、看護師以外にも看護助手(看護補助者)、クラーク、医師、薬剤師など様々な職種の職員が働いています。
しかし、看護記録は診療録の一部であるため、基本的に看護師が記録します。
看護助手(看護補助者)は、看護師の補助業務として、看護師の指示のもと、食事介助や送迎などをしてもらっていますが、無資格であるため、食事量などの看護記録は有資格者である看護師が記録する必要があります。
看護師の指示のもと、看護業務の一部を看護助手(看護補助者)が行った場合は、看護助手(看護補助者)の報告を受け、看護師が記録を行います。
その際、報告を受けて記入した看護師を明確にしておくことが大切です。

看護記録監査とは

よりより看護記録を書くために、医療機関では記録の監査を行っています。監査では、看護師の質の向上と分かりやすい記録になることを目的として監査者から記録のチェックと指導を受けます。
監査には2種類あります。病院で定められた記載方法で記録ができているかを監査する形式の監査と、患者の状態や実施したケアなどを記入し、的確で論理的なアセスメントのもと評価やプランの修正ができているかを監査する質の監査です。